ランニングってただ走るだけの、見かけの動作としては単純なスポーツです。
サッカーや野球のようにポジションもなければ、ボールを蹴る、受ける、投
げる、打つなどもありません。トリッキーな動きやあり得ない奇跡的な好プ
レー、珍プレーも少ないです。
競技としたらただただ早いか遅いか、抜くか抜かれるかのシンプルなものです。
しかし「走る事」にそれぞれの色々な想いや感情があります。身につけるウ
ェアやグッズ、食べる食事にもそれぞれの考えや理論があり選んでいるかと
思います。
ただ走るという動作だけですがその根本は複雑なものがあるのだと思います。
ランニングについての本はテクニックなどマニュアル的なものが多い中は走
り方やトレーニング方法、道具の選び方ではない「ランニング」自体の考え
方や想いが読める本を10選ご紹介します。
目次 1.村上春樹 「走ることについて語るときに僕の語ること」 2.クリストファー・マクドーガル「BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナー VS人類最強の“走る民族"」 3.堂場瞬一 「チーム」 4.鳥飼否宇 「激走」 5.三浦しをん「風が強く吹いている」 6.田中 渉 「走ることから学んだ夢をかなえる方法 そして、僕らは風になる」 7.パトリシア・ネル・ウォーレン 「フロントランナー」 8.トム・マクナブ「遥かなるセントラルパーク」 9.アラン シリトー 「長距離走者の孤独」 10.坂井 希久子「ウィメンズマラソン」
村上春樹 「走ることについて語るときに僕の語ること」
言わずと知れた小説家の村上春樹氏ですが小説ではなく、走ることについての
想いや考えと体験について書かれたものです。
いつもノーベル賞候補に上がる天才的小説家ではありますが、小説家というと
朝昼逆転したような時間帯で小説を書き酒や食べ物も気を遣わず欲しいものを
欲するままに求め、それは不健康な生活をしているという印象を受けます。
もちろんそんな人がいるかどうかはわかりませんが原稿の締め切りや何やらで
規則正しく生活することからは縁遠い人が多いのではないかと予想はされます。
この本によると村上春樹氏は走ることを含めて極めて「ストイックな生活」を
しているのです。
ストイックな生活を続けることで人間本来の感情が出てくるので、その本能を
コントロールすることを楽しんでいるようである。
「Pain is inevitable, Suffering is option.
=痛みは避けがたいが,苦しみはこちら次第」
は作品中に出てくる文章で、たくさんの人がレビューなどで印象的としている
文章です。
マラソンの起源であるマラトンからアテネを走ったり、100kmマラソン、トラ
イアスロンなどについても、読んでいると自分も挑戦したくなるような気にさ
せる本で、健康のためとかダイエットのためとかよりもっと奥深いところに走
る意味を感じる本である。
村上春樹の小説は難しくて読みにくいと思っている人もいるようですが、読み
やすく一気に読み進められる内容と文章になっています。
クリストファー・マクドーガル「BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”」
ランニングを始めて何年かした頃ランナー仲間に「やっぱりスポーツは道具の
良し悪しだから価格が高くて良いシューズを使った方が早く安全に走れる」と
いう私の意見を話したところ、聞いた仲間がこれを読んでみてと勧められて読
んだ本です。
「走る」ことについての概念が根本から変わった本です。
メーカーの販売戦略でクッション性や足を保護することにこだわって作られた
ランニングシューズがランナー達の故障の原因であったこと。人類は走る為に
生まれ、そもそも長距離走れるようにできているものであること。
メキシコの山奥の毎日とんでもない長距離を走っている民族のその足には古タ
イヤのサンダルであり、その民族の走りは足のどの部分で着地するかなど、な
るほどそうなのかということが満載の本です。
かなり本のボリュームもあり途中飽きてしまうところもありますが、サラサラ
と読み進めると山場がいくつかあるので意外と読めてしまう内容です。
これを読んだらもちろん走りたくなりますし、走り方や走ることについて色々
と試してみたくなる一冊です。
その他ランニングを題材にした小説
堂場瞬一 「チーム」
箱根駅伝を題材にした小説ですが、シードや予選を勝ち抜いた出場校ではなく
学連選抜のチームの話です。
普段はライバル同士がこの時だけはチームとして走りタスキを繋いでいく選手
達の葛藤や想いが描かれた小説です。レースの場面はハラハラドキドキで読み
進めてしまいます。
メディアでは優勝校や有力校ばかりの報道ですが、それ以上に学連選抜のチ
ームにはドラマがあるのでは? とこれを読むと毎年の箱根駅伝の楽しみ方が
チョット変わるかも知れません。(現実には箱根駅伝84回に現青学の原監督が、
学連選抜でなんと4位という記録を出しています。そんなことも想像しながら読
鳥飼否宇 「激走」
オリンピック予選を兼ねた福岡国際マラソンを舞台に、何人かの選手、ペース
メーカー、白バイ警官のそれぞれの想いや心理描写で進んでいく。1kmごとに
章が進みミステリー的要素が強く一気に読み進みたくなる小説。結末は事件解
決のようなスッキリ感を残して走り出せます!
三浦しをん「風が強く吹いている」
こちらも題材は箱根駅伝の小説で2009年に映画化もされている作品です。
陸上初心者のメンバーが箱根駅伝を目指すというスポーツ系のドラマや漫画に
ありがちな内容ですが友情や根性や学校の伝統とかではない若者のノリの良さ
と面白さで心地よく読み進められる小説です。
田中 渉 「走ることから学んだ夢をかなえる方法 そして、僕らは風になる」
人生どん底状態の、運動音痴の高校生と年中サンタクロースの服を着ている変な
オトコの二人がひょんなことから出会い一緒に大きな夢を追いかけるストーリー。
考え方やトレーニングなど二人の支えになるのが実在の歴代マラソンランナーの名言。
「マラソンは心で走れ」瀬古利彦。「何も咲かない寒い日は下へ下へと根を伸ばせ。
やがて大きな花が咲く」高橋尚子。「次の電柱まで頑張ってみよう」君原健二。等々
ランニングだけではなく生き方にも役立つ内容。
パトリシア・ネル・ウォーレン 「フロントランナー」
スポーツ、ランニングの小説というよりは恋愛小説?青春もの?当時の社会の偏
見への批判か?オリンピックを目指す選手もそのコーチもゲイという設定。
これでもかという困難に立ち向かっていく直向きさに感情移入しつつのラストは
感涙ものです。
トム・マクナブ「遥かなるセントラルパーク」
簡単にいうとアメリカ横断5000キロのウルトラマラソンの話。これを一つの興
行としてマラソンをするがそれぞれのキャラクターや思惑そして心境の変化など
全2巻だがかなり面白く読める小説です。
一般ランナーでもあるある、わかるわかると共感できるところもあり普段の走り
と重ね合わせながら読んでいけます。「人間にとって距離は問題ない・・・・」
アラン シリトー 「長距離走者の孤独」
一昔前の若者特有の社会や権力に対する反発や抵抗感を持ちながら、無気力や
無感動ではなく自分を持ちつつ、「走る」を通して自分の感性のままに一生懸
命に生きていくというストーリーに好みの分かれる作品かもしれません。
自分を出したいのになかなか出せないという自分には共感のできるものでした。
坂井 希久子 「ウィメンズマラソン」
一度はオリンピック代表に選考されながらも辞退。
次のオリンピックに掛けながら前に進もうともがく30歳シングルマザーの陸上
選手の主人公。主人公は決して「いい人」ではないところにリアリティがある
が共感できるかどうか好き嫌いがハッキリするところ。選手、監督など実在の人
が登場するところなどは物語を想像しやすく、マラソンレースシーンなどは臨場
感たっぷりに読める1冊です。
まとめ
走り始めた理由は健康のため、ダイエットのためと体を動かしてこそのランニン
グです。
そして正しいとされるフォームで適切なトレーニングを行なって大会などで目標
のタイムに近づいていくのはとても成長や体の変化を感じられて良いことだと思
います。
しかし、たまにはそもそも走ることとは?とか自分は何のために走るのかなどを
改めて考えてみると、今後の走りも変わってくるかも知れません。
走らない時間でぜひランニングに関する本を読んでみましょう!